大人が見ても面白い話を子供にもわかるように
テレビアニメ『それいけ!アンパンマン』(日本テレビ系)で「神回」と評される作品を連発し、映画最新作『それいけ!アンパンマン チャポンのヒーロー!』(6月27日公開)の脚本も手掛けた葛原秀治氏にインタビュー。どのようにして視聴者を魅了する物語を生み出しているのか、制作の裏側を聞いた。葛原氏が『アンパンマン』の脚本を手掛けるようになったのは、2018年のこと。
きっかけは先輩ライターからの紹介だった。
「アンパンマンに長年携わっていた先輩ライターさんから『やってみる?』と声をかけていただいて。ビッグコンテンツということはわかっていたので、うまくできるかなと、うれしさ半分、不安半分でした」
それまであまり『アンパンマン』を見てなかったものの、過去の放送回を見て作品の面白さに驚いたそうで、「子供向けと思っているところがあったのですが、大人でも楽しいなと思いました」と語る。
葛原氏も『アンパンマン』の執筆において、「大人が見ても面白い話を子供にもわかるように書く」ことを最も意識しているという。
「子供の夢と笑顔のためにという高尚な気持ちは全然なくて、自分が楽しいと思うものを子供にもわかるように書けば、大人も子供も笑ってくれるのではないかなと。子供だましではなく、大人向けの話になっているので、子供に見せていたつもりが、知らない間にお父さんやお母さんも見入ってくれたら、それが一番いいなと思っています」
SNS上で「神回」と評される作品を数多く手掛ける葛原氏だが、その背景には「誰が書いても似たような話になってしまうのは避けたい」という思いがある。
「極端な話、脚本のクレジットを見なくても自分が書いたということが伝わるようなお話になればいいなと思っています。でも決して無理して何かひねり出そうとしているわけではなく、『アンパンマン』の世界の中で、衝撃を与えられるような何かをやりたいというだけで、奇をてらっているわけではないです」
従来の枠にとらわれない斬新な脚本は、葛原氏の想像力によって生まれる。
「『アンパンマン』はだいたいゲストキャラ2人で進行しますが、頭の中でその2人に話をさせると、そのうち何かやり出すんです。僕はもともと精神年齢が低いので、『アンパンマン』の世界と馬が合うというか、書いているときが一番幸せです」
姪っ子の言葉「将来の夢は脚本家」に感激
ネットの評判は「怖くて見ない」という葛原氏だが、SNSでの良い反響は家族や友人たちから届いているそうで「そういう声はうれしいです」と喜んでいる。また、最近一番うれしかったのは、姪っ子の言葉だと明かす。
「小学4年生の姪が、教室の壁に貼る自己紹介カードの“将来の夢”の欄に『脚本家』と書いていて、めちゃくちゃうれしかったです。
僕の親父の職業も書いてあったので僕だけではなかったんですけど」
さらに、その姪が「私の叔父がアンパンマン書いているって言いふらしたいけど、うざい人だと思われそうだから我慢している」と話していたことも姉から聞いて、「うれしかったです」と笑顔をこぼした。
『それいけ!アンパンマン チャポンのヒーロー!』は、空から落ちてきた不思議な男の子・チャポンとアンパンマンの絆を描く物語。チャポンは、アンパンマンを兄のように慕い、「ヒーローになりたい!」と願うも、ばいきんまんから自身の出生について衝撃の真実を知らされショックを受ける。「なんのために生まれて なにをして生きるのか」。原作者のやなせたかしさんが作詞した「アンパンマンのマーチ」のメッセージと重なる物語となっている。
葛原氏が映画『アンパンマン』シリーズを手掛けるのは、2022年公開の『それいけ!アンパンマン ドロリンとバケ~るカーニバル』以来、2作目となる。
本作でも、葛原氏が大切にしていることは変わらない。「根底にあるのは、自分が楽しくて、大人が見ても面白いということ。大人の方が『アンパンマンやるやんけ!』と思ってくれたらいいなと。それを子供でもわかるように書きました」と語っていた。
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