3人組バンド・BEGINが、2日に7年ぶり21枚目のオリジナルアルバム「太陽」をリリースする。比嘉栄昇(56)、島袋優(56)、上地等(57)のメンバー3人が、このほどスポーツ報知の取材に応じ、1990年のデビューから35年のキャリアや故郷・石垣島で完成させた新作について語った。
ことあるごとに、中央の比嘉が、両脇に座った2人の顔をのぞき込んだ。「どう思う?」「あの時はそうだったねぇ」。デビューから35年。3人の絆と空気感は、健在だった。
35年の節目に完成させたアルバム。上地は「今まで何度か石垣島でレコーディングをしてきました。その中でも今回は、その時間がすごく長くて。石垣島の魅力がアルバムの中に入った感じがして」と言うと、島袋も「『MADE IN 石垣島』と言っていい作品。自分たちの日常がにじみ出ている」と重ねた。
島のスタジオで行われた録音作業。一歩外に出れば、鶏が走り、カラスが鳴く。コンテナの屋根を雨が打ちつければ、その日の作業は中止に。
アルバムと同名の1曲目には、一昨年のツアー中に急逝したスタッフへの思いを込めた。
比嘉「長年照明を担当してくれた方で。お客さんからのリクエストで、僕らがノリで曲順を変えたりしても、いつもニコニコと対応してくれた。大事な相棒だった」。穏やかだが、表情に悲しみ、憂いが交ざった。「中学、高校の時にバンドはハッピーしかないと思っていたんですけど、長く続けていくと別れはついて回る。だからこそステージ上では日常の悲しみやつらさを忘れようと心がけているんですけど…」。何秒間か、間が空いた。「でも何日間かライブをやる意味はなんだろうと迷ってしまって。その時にこの曲を作り始めて『あぁ、あの人は僕の中にいるな』と。だったら、もうちょい頑張ってみるか。歌に助けられたのは久しぶりの感覚でした」
アルバムを引っさげ、9月から全国ツアー(35公演)を巡る。「さにしゃんサンゴSHOW!~35年目の音楽旅団ツアー~」のタイトルにも意味を込めた。
比嘉「デビューの時に『旅する音楽団』と各地を回っていたんですけど、本当にその通りだなと。自分たちは、小さな離島で生まれ育って。どこに行くのも旅だった。あれから35年。日本中を巡らせていただいて、『石垣島ってそんなに言う程田舎じゃないな』って。負けたっていう場所たくさんあって(笑)。こっちは、田舎自慢したいわけですよ。これは、俺らが音楽を届けにいかないとダメだと」。言葉に、力がこもった。「僕らみたいなバンドは東京、大阪に集合してくださいと言えるようなバンドではない。このアーティストだけが好きですというファンの方じゃなくて。BEGINも好きかなぁっていう(笑)。
◆BEGIN 比嘉栄昇(ボーカル)、上地等(キーボード)、島袋優(ギター)の幼なじみ3人が東京で結成。1990年シングル「恋しくて」でデビュー。その後も「涙そうそう」や「島人ぬ宝」などヒット曲を連発。